告白:4
「いやほんっっっと、なにあのバカ女に引っかかってるんだよって感じよ。」
凄い剣幕で木田さんが話す。
「やーねー、香織ちゃん。熱くなっちゃって。」
山田さんが笑いながら返す。
「熱くもなりますよ。何年も。」
鼻息が荒い木田さん。
「でもさ、それでも成ちゃんが好きだったってんだからしょうがないよね。」
「山田さん、分かってないですよ。あのバカ女、成とどうにかなろうなんてハナっから思ってないんですから。なのに成を弄ぶような事ばっかして。足としか思ってなかったはずですよ。」
まだ怒るか、木田さん。
…………時を戻すと、30分前。
私が控室で休憩していたら、山田さんと木田さんが丁度同じタイミングで控室に入ってきて…。
山田さんがうっかり先日話した『成ちゃんが花をあげていたその人』の話しを私にしたばっかりに、現在木田さんの頭に血が上っている、というワケ。
でもやっぱり、木田さん私の方は見ないし、なんとなーーーーく、力を込めて話している時に①私にも何かを訴えている様な気がする。
…それにしても、木田さんの言ってる事が本当なのであれば、『成ちゃんが花をあげていたその人』はなかなか小悪魔な感じだ。
何年も成ちゃんからの告白を袖にしておいて、何度も誘ったり迎えに来てもらったり、好き放題らしい。
“あの”成ちゃんがそんな風にされて、黙って言う事を聞いているというのはちょっと信じがたいけど、それだけ好きだったって事か…。
ショック。
っていうか、好きだった、とか今思ってるけど本当にもう過去形なんだろうか?今も好きって事だって考えられる…よね。
「こないだ、成ちゃんとラーメン行ったんですけど、その時その人の話し全くしてなくて…。今でも成ちゃんはその人の事を好きなんでしょうか?」
勇気を出して聞いてみた。
すると、②木田さんは結構怖い顔をして私の方を“ひとにらみ”して、控室から出て行った。大きな音を立ててドアを閉めながら。
・・・・・・・しまった・・・。
しまった、という顔をしていると山田さんが
「どうだろ。こないだ聞いてた感じだと、もう流石に追っかけてなさそうだけどね。麻衣ちゃん、気になるの?」
とフォローしてくれた。
「いえ、いや・・・ちょっと・・・。」
と、なんと答えて良いのか分からない私。
「それにしても、香織ちゃんの今のはダメね。さすがに麻衣ちゃんに対してあからさま過ぎるわね。」
と山田さんは“許してね”というジェスチャーをしながら言った。
木田さん、確かに正式な店長ではないけど、先輩ではあるんだから…。
それでも、木田さんは仕事に関して支障が出るような事はしなかったし、特に問題が起きるような事は“直接的な”言動以外ではしなかった。
①私にも何かを訴えている様な気がする。
└明確に自分に対して言っているわけではないのに、自分が言われている気持ちになる事ってありますよね?
大抵はその場合、自分の被害妄想である事が多く、その言動を行った当人は全くそんなつもりはなかった、という事の方が多いです。
目や顔の向き、手の動きなど細かい仕草をチェックして、それで見抜く事が出来る事はあるものの、それも心理に長けていて慣れている人でないと断言は難しいと思います。
なんとなく、嫌な事を自分に対して言っている、と思った時は概ね思い過ごしだと思って気にしない様にしましょう。
②木田さんは結構怖い顔をして私の方を“ひとにらみ”して、控室から出て行った。大きな音を立ててドアを閉めながら。
└この様に、自分が話しかけた内容に答えもせず自分を睨んでその場から大きな音を立てながら去っていく。ここまで明確な場合は、自分に向けてだと思って良いでしょう(笑)