告白:1
「それで?最近、例の店長さんは何か言ってくるの?」
結構身を乗り出して正子が聞いてくる。
都内のカフェ。
今日は久しぶりに正子と由美に会えるから、凄く楽しみにしていた。
卒業してからも私達3人はほぼ毎日連絡を取り合い、定期的に会って話していたが、3人が全員揃うのは久しぶり。
「木田さんは、やっぱり全然私と喋ってくれなくなったね…。」
「何それ、やっぱ“成ちゃん”の事好きなんじゃないのー?」
由美があっけらかんと言う。
「どうなんだろ。でもそう思わないと辻褄が合わない事は確かに多いんだよね、最近…。私と成ちゃんが控室で話してると仕事があっても絶対その場からいなくならないし。」
「げ!あからさまじゃーん。」
由美が怪訝な顔をしながら言う。
そう、成ちゃんと2人でドライブに行ったあの日以降、木田さんは私と雑談しなくなった。
もちろん私が話し掛けた時は答えてくれるんだけど、そっけない。
でも、大森さんや米倉さんとは楽しそうに話しているのを見るので、やっぱりこれは流石に成ちゃんが理由なんじゃないかって思ってしまう…。
一方で、私はどんどん成ちゃんと仲良くなっていった。
やっぱり気が合うし、話しも面白い。かなり屁理屈ばっかり言う人だから癖も強めだけど、笑い合いながら話しているのが凄く楽しかった。
凄く好きだけど、まるでお兄ちゃんが出来たかの様ななつき方をしていた。いつしか私は“君嶋さん”ではなく“成ちゃん”と呼ぶ様になっていて、clanでも変な噂が立つこともなく過ごせているんだけど、木田さんだけはずっと変なまま…。
①木田さん、成ちゃんとは普通に話してるんだよね…。
「ねえ、そろそろドライブばっかりしてないで、別のデートにでも誘ったら?」
由美がテンション高めに提案してくる。
「誘われるの、待ってるんだよね?」
正子がフォローしてくれる。
「うん…。何か進展があったら嬉しいなとは思うんだけど、成ちゃんすごく出不精で、趣味もインドアばっかりだから、唯一外に出る趣味がドライブなんだよね…。」
「もうちょっと合わせてよって思うわ(笑)」
由美が、自分だったら無理、という表情をしている。
「だけど、麻衣は自分達を客観的に見ても、いいかんじなんでしょ?」
正子がちょっと真剣に聞いてくる。
「うん。毎回本当に楽しそうだし、毎回ドライブも全く私に聞かずに成ちゃん主導で始まるし…。」
「よし、じゃーー、告っちゃいなよ!!」
由美が随分前のめり。
「そ、それはちょっと流石に…。」
あまり考えてなかったから、“告白”って聞いただけでしり込みする。
だけど、そうか…。
今よりも成ちゃんと近くなりたかったら、告白してもっとしっかりした関係にならないとダメだよな…。
成ちゃんって、告白とかした事あるのかなぁ?
そういえば、恋愛の話し殆ど聞いたことが無いなぁ…。
①木田さん、成ちゃんとは普通に話してるんだよね…。
└ある機会を境に相手の態度が変わった場合は、その前後で何が違うか、何が起きたかを良く考えた方が良いです。
そして、分かり易い程態度の変化を感じる場合は、直前の出来事が大きく関係している可能性が高まります。
今回の場合は、直前に『君嶋さんが“わざわざ”主人公の麻衣よりも先に木田さんを車から降ろす』という行動を2回連続で起こしています。そしてこの行動に麻衣の意思が直接関係していない事はその場にいた木田さんにも理解出来るはずです。
なのに、行動を起こした君嶋にではなく、麻衣に対する態度が変わっている。
この事から考えられるのは、やはり木田さんが君嶋に好意を寄せていたという事です。
何故ならば、女性は恋愛で嫉妬を感じると恋愛対象ではなく、その相手に対して敵意を持つものだからです。
※ただし、別の行動で直接相手に迷惑をかけている、という可能性もありますので断定するのは自分の他の言動も振り返ってからにしましょう。