出逢い:5
厨房で明日の仕込み作業などをしているシェフ達を横目に、私達は勝手口から外に出て、駐車場まで来た。
オーナーを含めて7人。
1台の車で行くにはちょっと狭い気がするな…
と思っていると、君嶋さんは自分の車に足ばやに乗り込んでいった。大き目のワンボックス。
(確かにこれなら全員乗れるかも…?)
「ちょっとギュウギュウになりそうなんで、僕車出しますよ。」
ちょっと狭いかも、とみんなが思ったタイミングで横から林さんが提案する。さすがはみんなの父。
すると、
「俺そっち乗るわ。」
と何故かオーナーが林さんの車に向かった。
「林くんの車、俺が昔乗ってた車と同じなんだよ。だからちょっと乗ってみたかったんだよね。」
とニコニコしながら。
(なるほど。オーナーは車も結構好きなのか…。)
と同時に、大森さんも自然に林さんの車に向かう。
(え、これ私と米倉さんどうしたら良いんだろう…?)
そう考えていた時、
「2人はこっちおいでー!」
と、木田さんが私達を呼んでくれた。
そして、①木田さんは当たり前の様に君嶋さんの車の助手席に乗り込んだ。
米倉さんが木田さんに続いて君嶋さんの車に乗り、私は後に続いた。
君嶋さんの車に乗る事が出来るのは嬉しいけど、この状況は少々拷問かもしれない…。
林さんの車が先導して、君嶋さんの車が後を追う。
案の定前に座っている2人、後部座席の2人、で割れて話しをしている事が多く、私は車の中で余計落ち込んでしまった。
米倉さんが一生懸命私がお勧めしたマンガの話しをしてくれているのに、私は前の2人が何を話しているのか聞き耳を立てるばっかりで、流石に米倉さんには私の気持ちがバレてしまったんじゃないか、と思った。
「夜中のラーメンって罪悪感凄いけど本当に美味しいと思う。」
と木田さんが楽しそうに話す
「だけど、7人も一気に入れる店なんてあんの?」
君嶋さんが答える
「オーナーが好きな店、テーブルもあんの。」
木田さんがそれに答える。
(②うーーーーん。確かに仲は良いけど、普通の会話だなぁ。でもまぁ、付き合ってたって普通の会話もするもんね…)
夜中は車通りも少なくて、昼間に行くよりも断然早く着く。
環七の夜景は都会っぽくところどころにライトが光っていて、それでいて少し派手さに欠けるから、人が近くに住んでいる気がするのが良い。
ラーメン屋に到着すると、各自好きなラーメンを発券機で注文していく。
「みんな醤油注文してるけど、なんで?俺とんこつがいいな。」
突然横に君嶋さんがいて、発券機を見つめながらそうつぶやく。
(あれ?今のって独り言?私、何か言った方が良いの?)
「渡瀬ちゃんは、何にするの?」
やっぱり君嶋さんは私に話しかけてくれていた。
「どうしよう、じゃあ、私もとんこつがいいです。」
「本当?分かってるじゃん。」
そう言って君嶋さんは発券機で2つ分のとんこつラーメンを注文して私に券を渡してくれた。
①木田さんは当たり前の様に君嶋さんの車の助手席に乗り込んだ。
└助手席の存在というのは人によって大きく価値観の異なる場所です。
人によっては全く気にせずに誰でも助手席に乗せる人、誰の車の助手席にも乗る人もいれば、大切な人以外を絶対に助手席に乗せない人や、好きな人の車の助手席を絶対に誰にも譲りたくない人もいます。
中には、自分の子供にすら助手席を明け渡したくないと思う人もいるそうなので、好きな人をリサーチする時には助手席に対する考え方を事前に雑談などでスマートに聞き出せるようにしておくと、いざ一緒に車に乗る時、自分の立ち位置の目安になるかもしれません。
②うーーーーん。確かに仲は良いけど、普通の会話だなぁ。でもまぁ、付き合ってたって普通の会話もするもんね…
└好きな人に恋人かもしれない相手がいたら気になってしまうのは当然です。
そんな時は、
・会話の内容
└個人的な会話をどの程度しているか
・話し方
└相手への個人的な気遣いがあるか、または気を許していてぶっきらぼうか、など
・距離感
└相手を触る、などの行動があるか
・目線
└相手をどの程度見ているか(特に男性が女性を)
・しぐさ
└笑顔が多いか、体の向きが常に相手を向いているか
などで判断出来る場合があります。
しかし、長年一緒にいるカップルであったり、一時的に喧嘩しているなど、見ただけでは判断し切れない事も多いので、あくまでも目安として考えるだけに留め、これだけで決めつけるのはやめましょう。