出逢い:8
10分ぐらいだったけど、君嶋さんと車の中で2人になった事は私の中で大きなきっかけになった。
あれ以来、clanで会っても君嶋さんとは仲良く話しをする事が出来たし、①私は話しをする度に君嶋さんを好きだと思う気持ちが強くなっていった。
「渡瀬ちゃん、来月のシフトで相談したい事があるから後で話しがあるー!」
「はーい。」
木田さんの事も気になっていたけど、木田さんも特にその後変わった様子もなく、いつも通りの日々が続いていた。
そんなある冬の日、
またしても控室で、今度は美味しいチャーハンの話しになった。
そこにいたメンバーは、私と米倉さん、大森さんと林さん、木田さんと君嶋さんとシェフの高杉さんだった。
「俺がお勧めなのは、3区の高架下にある中華だな。」
高杉さんが自信ありげに話す。
「シェフがお勧めしてくれるなら、確実でしょうね!」
林さんが目を輝かせる。
「行ってきなよ。結構遅くまでやってるよ。」
「やったー、行きたい!!」
いつものように私と米倉さんが賛成する。
控室で食べ物の話しになると、大抵この流れから大森さんと林さんが乗ってくれて4人で行く事になる。
「あ、じゃあ…俺、車出そうか?」
だけど今日は、君嶋さんが一緒に行く事に立候補した。
実はこれ、かなり珍しい。木田さんが少し驚いた表情をしていた。
やっぱり前回のラーメンが楽しかったのだろうか。
「え?良いんすか?」
「うん。」
すると、
「え、いいなチャーハン。じゃー私も行こうかな!」
木田さんも行きたいと言い出す。
(やっぱりこの2人って…。)
情報を教えてくれた高杉さんにお礼を伝えて、私達は全員で君嶋さんの車に乗り込んだ。
案の定、高杉シェフのお勧めは大ヒットで、ここには暫く通う事にしようか、という話しで全員一致。
clanからも車ならそう遠くないし、遅くまでやっているし、店も綺麗。
全員の顔に“大満足”と書いてある。
普段洋食ばかり見ていて、まかないも洋食の私達からしたら、中華は隣の芝生以上に青いのだ。
そして君嶋さんはもう一度車をclanまで走らせた。
自分の車がclanに停まっている大森さんと林さんはそこで降りて、林さんが「家から近いから。」と米倉さんを送っていく事にした。
「渡瀬ちゃん、送っていくからね。」
そう君嶋さんが言ってくれた。
ドキ
ラーメン屋に行った時に最後2人になった事を思い出す。
でもやっぱり今日も助手席には当たり前のように木田さんが座っている。
すると、その日も君嶋さんは何も言わずに木田さんを先に送ったのだ。
私の思い違いかもしれないけど、今日は木田さんが車から降りるまでに数十秒躊躇った時間があった気がした。
もし2人が付き合っているのであれば、確かにこの状況は文句の1つも言いたくなるかもしれない…。
だけど木田さんは結局車を降りた。
「お疲れー!」って明るく言ってたけど、②木田さんは私の方を見なかった。
そして君嶋さんは
「③前おいで。」
と私に言った。
何これ…彼女公認で浮気OKの遊びか何かなんだろうか…。
それでもやっぱり、助手席に座って帰れることは嬉しいし、何よりも君嶋さんが私と2人でいる事を選択してくれているのはそれ以上に嬉しかった。
「渡瀬ちゃん、明日は朝早いの?」
君嶋さんが車を走らせながら私に質問してくる。
「いえ、明日はもう学校も無いですし…。」
(なんでそんな事、聞くんだろう?)
私の答えに君嶋さんは何も言わずに、別の話題で話しかけてきた。
「それで?高校卒業した後、何するの?」
と、君嶋さんが私に質問を振ったその時だった。
(あれ?今の角、右に曲がらないと家に着かない…。)
君嶋さんの車は何も言わずに私の家の近くを通り過ぎて、夜中の街を進んで行った。
①私は話しをする度に君嶋さんを好きだと思う気持ちが強くなっていった。
└接点が増えれば増えるほど、相手に好感を持つことを“ザイオンス効果”と言います。1回の(不毛な)デートで長時間一緒にいるよりも、短時間接触する回数を増やすというものです。
この効果は初期段階や相手にポジティブな印象を抱いている段階では非常に有効ですが、ネガティブな印象を与えた後や長年やり取りしている相手には効果的ではないケースも多いので、注意が必要です。
②木田さんは私の方を見なかった。
└非言語コミュニケーションにおいて、こちらを見ない、というのは下記の心理が考えられます。
恥ずかしい
退屈だと思っている
懐疑的である
不同意的である
もしも恋愛対象の相手がこちらを見なかったら、恥ずかしいと思っている場合以外は努力が必要かもしれませんね。
③前おいで。
└これは心理というより、特に男性が女性に使う言葉としてお勧めの言葉です。
「おいで」という言葉の中には、
強引さや優しさ、甘えた気持ちなどが全て含まれている様に聞こえるため、女性が言われるとトキメキやすい言葉としてネットで特集が組まれた事もあります。男性の中にも女性に言われると嬉しいという人もいらっしゃるようなので、ここぞという時に使ってみましょう。
ただし、ある程度仲良くなってから使わないと、逆効果にもなりうるので使うタイミングは気を付けましょう。