告白:6
「それ、デートじゃん!!!!!」
由美がテーブルから乗り出して叫ぶ。
「ちょっと由美、みんな見てるから座ってよ。」
由美って毎回テンション高くてリアクション良すぎる。
今日は由美と2人で買い物に来ていて、今前から来たいと思っていたイタリアンのランチに来ている。
少しでもclanで使えそうな工夫は無いか店内を見渡しながら、いつも以上にテンションが高い由美と喋っていた。
「ほんと、麻衣と成ちゃんって暫くそのままだから、このまま永遠にドライブ仲間のままいるのかと思ったよ。」
由美は本当に正直。
「そうだね~…。確かに、私もこのまま行くとただの兄弟?兄妹?みたいになっちゃうなって思ってたから…。」
確かに、最近の私と成ちゃんは恋愛という空気よりも兄と妹の様な空気になってしまっている気がしていた。
「成ちゃん、告白してくるかなぁ…。」
由美がストローを口に加えながら窓の外を眺めてニヤニヤする。
「どうだろう…。してくれたら嬉しいけど…。」
デートだと思ってしまうと、どうしても意識してしまう。
「っていうかさ、麻衣が告っちゃえばいいんだよ!」
目がキラッキラしてるよ由美。
「由美、告らせようとするの好きだね。」
「だって、うまくいくと思うなぁ~。」
「そりゃ、私も流石にうまくいくんじゃないかって気もするけど、こないだ何年も片想いしてたの聞いちゃったからなぁ。」
と、こんな話を続けて、結局私と由美は、告白されるだの告白するだの、そんな話をずっと延々と続けながらランチを終えた。
由美と別れて電車に乗りながら帰っていると、携帯が鳴った。
見ると、成ちゃんからメールが届いていた。
成ちゃんは携帯を持っていなかったんだけど、やっと時代に追いついたみたいで、最近契約してメールもやっと送る事が出来る様になったのだ。
[メールの練習!ちゃんと届いてますかー?]
文章を見て、思わず笑ってしまった。
[おじいちゃんかよ(笑)]
ツッコミを入れる。
そんなたわいもないやり取りが何度か続くうちに、私はどんどん成ちゃんを好きだという気持ちが膨らみ、早く会いたいと思っていた。
(そうだ、ライブ行く時横浜って言ってたな…。結構遠いみたいだから、①好きな曲と成ちゃんの好きそうな曲集めて、オリジナルテープ作っておこうかな。)
成ちゃん、音楽は好きで色々聴くんだけど特定のアーティストのファンではなく、サザンとかミスチルとかをたまに買って聴くぐらいだった。
だけど、私が勧めた曲を気に入ってくれる事が多く、「最近良い曲ないの?」と頻繁に質問されていた。
だから、オリジナルを作って成ちゃんの車で聴くのはちょっと素敵なアイデアかもしれない。
成ちゃんの車、MD聴けないからカセットテープにするしかないんだよね。
そう思うと嬉しくなって、私は帰宅してから色々なCDとMDを漁って、成ちゃんが好きそうな曲と自分の好きな曲を集めて、横浜まで行くのにちょうど良さそうな長さのテープを深夜まで作りこんでいた。
①好きな曲と成ちゃんの好きそうな曲集めて、オリジナルテープ作っておこうかな。
└昔は今と違ってオンライン配信もなければ、HDDやSSDなどもなく、もちろんサブスクなんてものも無いので、CDやMD、もっと遡るとカセットテープで音楽を楽しんでいました。
オリジナルカセットテープを作るというのは今でいうプレイリストを作る感覚と同じですが、全ての曲を1曲ずつダビングしないといけなかったので、手間と時間が大変かかる大仕事でした。
ですが、その分良い曲がたくさん入っているオリジナルカセットテープを恋人にプレゼントするというのはとても喜ばれるもので、ドライブの時に流すなど、恋愛のエッセンスになっていました。
今もそれぞれの恋愛で、思い出の音楽というものはあると思いますが、こういう時代もあったんですね。
全然心理学じゃない、って感じたかもしれませんが、実は音楽が恋愛に与える影響は大変大きいと言われており、好きな曲を聴いてドキドキする気持ちと恋愛のドキドキは似ていると言われていたり、過去の恋愛での思い出の曲を聴くと記憶を呼び起こしたり、など実は恋愛感情の盛り上げや復縁などに効果的に働きやすいものなのです。
なので、今後長く一緒にいたい相手がいる人は、思い出の曲というのを作っておくのはとっても大切です。