痛み:5
結局成ちゃんから折り返しの電話もメールも来ないまま、その後2日経った。
clanで会った成ちゃんは、電話を折り返していない事も覚えていない様に普通に私に話し掛けてきて、何事もなかったかの様に過ごしているけど、私は成ちゃんがキャバクラの女の子とプライベートでも仲良くしていると聞いて、本当に自分はもう特別じゃなくなったのか、と胸が苦しくなった。
いや、元々特別なんかじゃなかった。
私が勝手に勘違いしてただけだし。
実際、告白して振られてるし。
そしてその夜、またみんなで夜食を食べに行き、その流れで帰りに成ちゃんとドライブに行く事になった。
成ちゃんの夜中のドライブコースは数パターンあるんだけど、基本のコースは1週2時間ぐらいのコースで、そこに短縮バージョンとかロングバージョンとか、コースに沿ってないバージョンとかが入り、どのコースを走るかはその時の成ちゃんの気分だった。
だから、長時間コースに車が進むと、私はいつも心の中でガッツポーズをして、もっと長く一緒にいられないかな、と考えた。
だけどその日は、成ちゃんが長時間コースを選んでも、私は心の中でガッツポーズをする気にはなれなかった。最初に助手席に乗った時から変だなと思っていた。
いつも座る時に座席に置いてあったクッションが、違うものに変わっていたのだ。
①それが気になって、気になって、気になって…。
「成ちゃん、このクッション…。」
と、ふいに聞いてしまった。
「ああ…。新しいやつ買ったんだよ。結構座り心地良いだろ?昨日も結構長時間寝てたから座り心地良いんだと思うよ。」
昨日寝てたって、誰が…?
「昨日、寝てたって?」
こういうの、聞いて良いのか分からないけど。
「いや、昨日乗せてたやつが、ドライブ中に寝ちゃってさ。」
成ちゃんは何も悪びれてない。
「誰かと一緒にいたの?」
ダメだ、聞こうとしてしまう。
「うん。もういいじゃんなんでも。」
成ちゃんがちょっとだけイラっとしたのが分かった。
「最近成ちゃん、キャバクラ行ってるの?」
「…なんだよ、大森くん?すぐ言うなぁ…。」
「キャバクラ好きなの?」
「好きっていうか、家帰ってもやる事ねーし。」
「家帰ったらゲームすりゃいいじゃん。」
「ま、仕事紹介してくれてるやつとの付き合いだから、断るわけにもいかんのよ。」
成ちゃんは、私の恋心を忘れているのか、知らない振りをするのが上手なのか、まるで私が告白したことが無かったかの様な雰囲気で話しをしている。
確かに気を使う関係ではないし、何か言える立場でもない。
分ってるけど、分かってるけど、自分が今まで一番成ちゃんに近いと思ってたのが、もしかして違うかもしれないと思うと、苦しくて吐きそうになった。
その日はそれ以上の事は何も聞く事が出来ず、私は帰宅した後もずっと胃がギリギリしていて、翌朝もあまり何も食べる事が出来なかった。
①それが気になって、気になって、気になって…。
└意中の人や恋人に、他の人がいるかもしれない、と勘づく時、女性が気にするものの1つは、車内や部屋の中に今までと違うものを見つけた時です。
しょっちゅう新しいものが家にあって、頻繁に模様替えをする様なタイプの人は少し違いますが、普段から全く車の中や部屋の中のものに無頓着で、新しくしたり変更したりする事が滅多に無い場合は一瞬で女性はそれを気にします。
だからといって、必ずしも新しいものが他の人との関係を現すものとは限らないので、女性はそういうものを見つけた時にも、証拠などが無い限りはいきなり怒ったり問い詰めたりする事はやめましょう。