痛み:3
成ちゃんに告白してから、3ヶ月が経った。
私が告白した事なんて、まるで全て無かったかのように元通りの日常が続いている。
本当に文字通り“元通り”なので、なんと、成ちゃんとの夜中のドライブデートも前と同じように続いていた。
この人本当に、どういうつもりなんだろう?
でもほら、①人って告白された事によって相手を気にする様になるって言うし、もしかして成ちゃん、今は少し私を恋愛対象として見てくれている…?
じゃないと、この状態生殺しだよ!
だけど、そんな淡い期待を胸に抱えつつ、意志の弱い私は成ちゃんのドライブデートの誘いを断る事が出来ず(というか、ほぼ強制だから断る暇がない)、気持ちを抑える事も成ちゃんを忘れる事も出来ないままだった。
〈いや、当たり前でしょ。それ〉
電話の向こうで正子がツッコミを入れる。
〈いつまでその生殺し状態続ける気?っていうか、成ちゃんも良く麻衣の事を振り回す気になれるよね。〉
正子はご立腹。私のためを思ってくれる親友がいる事は、心強い。
そんな、成ちゃんとの関係は付き合う事もないまま不思議な形で継続された。
以前と変わった事は、夜中のドライブデートの時に少し遠出する事が多くなって、一緒にいる時間がかなり長くなった事。
時には、その場のノリだけで2人で次に出てくる信号を右折するか左折するかだけ決めて、それで進めるところまで進む、という遊びをした結果、深夜バイト中の由美のところまで行ってしまった事すらある。
ちょうど由美がバイト終わりだったので、そのノリのまま戸惑う由美に成ちゃんを紹介し、3人で深夜のファミレスで話すという考えられない事も起きた。
正子は「生成ちゃんに会ったなんてずるい。」と由美を怒っていたけど、由美は何も悪くない(笑)
そんな風に時間を重ねていたから、私はやっぱり、成ちゃんを諦められなかったし、こうやって一緒にずっと遊んでいるんだから、前より脈があるんじゃないか、って思う様になってきた。
そして、切なくも楽しい日常が続いていたある日、告白してから半年経った頃、成ちゃんは突然バイトを増やすと言い出した。
そして、高校の頃の友達と連絡を取る様になり、時々その友達の働いているところで、バイトをする様になった。
①人って告白された事によって相手を気にする様になるって言うし
└全然好きじゃなかったのに、告白された事によって相手を意識し始めて、結局好きになってしまった、という話しは良く聞きます。
これは、告白をされた事によって相手が自分を好きだと意識する事により、「そうか、あの人は私を異性として見ていたのか。」と考え出し、実感し、自分も相手を異性として考え始めるから起こる事です。
つまり、自分の中でパラダイムシフト(意識改革、常識の変化)が起こったという事なのです。
つまり、告白されたから意識して好きになってしまうという現象は、上記の理由から、1度でも相手を異性として考えた事がある人には起こりにくい感情と言えるでしょう。